常に仰ぎ見るべき「北極星」としての財政ビジョンと、それを支える「見える化」(前編)
皆様こんにちは。
横浜市デジタル統括本部です。
このnoteを書いている2月は、横浜市役所では別名「予算市会」と呼ばれる「令和4年度第一回市会定例会」の会期中となっており、市が行う次年度事業の予算を定めるための議論が熱く交わされているところです。
インターネット中継も行われていますので、ご興味ある方はぜひご覧になってみてください。
そうして決められた予算ですが、横浜市の事業は文字通り「ゆりかごから墓場まで」をカバー範囲として多くの事業があり、市民・議会、民間企業などの皆様にわかりやすくお伝えするのが難しいという課題があります。
しかし、財政は市政の土台であり、市民の皆様の生活に密接に関わるものです。
デジタルを活用しながら、膨大なデータをわかりやすく表現し、市民の皆様に財政を「自分ごと」としていただきながら、今後の持続的な市政運営につなげていくことが期待されています。
ということで、今回は「財政×デジタル活用」をテーマに、「横浜市の持続的な発展に向けた財政ビジョン」と、市の財政をわかりやすく可視化しただけではなく、それぞれの事業予算ごとに民間からの提案を受け付けるための入口を作るという「財政見える化ダッシュボード」の取組みを中心に、横浜市財政局財政課のお話を伺ってきました。
お話を伺った方
財政ビジョンにおけるデジタル活用
横浜DX戦略(仮称)と同じ日(1月28日)に「横浜市の持続的な発展に向けた財政ビジョン(以下、財政ビジョン)」を公表されています。財政ビジョンとはどのようなものなのでしょうか。
近藤)財政ビジョンは、行政と市民・議会の皆様と今後の10年~40年くらいの財政のあるべき将来像等を共有しながら、持続的な市政運営を展開するための財政運営の枠組みや基本的な考え方をまとめたものです。
本市には「横浜市将来にわたる責任ある財政運営の推進に関する条例(以下、財政責任条例)」という素晴らしい条例があり、その中で中期的(4か年)な計画を決めるということが規定されています。しかし、4年という期間は、人口減少やデジタルトランスフォーメーションのように大きなことに取り組むには短く、逆に現在のような不確実性の高い社会情勢の中では4年前に計画したことを4年後にやっていても状況が大きく変わっている可能性が高いというデメリットがあります。
そのため、財政責任条例が目的とする「将来にわたる責任ある財政運営の推進」を実現するため、中長期的な財政方針として策定したものが「財政ビジョン」です。
他の自治体では長くても10年くらいの財政運営方針はありますが、ここまでの長期ビジョンはあまり例がないと思います。
デジタル技術への期待
ビジョンを拝見するとデジタル活用についても多くのキーワードが見られます。今後、財政ビジョンを推進していくにあたりデジタル技術へ期待することはどんなことですか。
近藤)確かに、財政ビジョンの中ではデータ活用、オープンデータ、EBPM、行動デザイン、行政サービスデザインなどのキーワードがちりばめられています。
財政ビジョンの中でもデータで示していますが、今後財政状況は厳しくなることが予想されています。つまり、インプットは少なくなり、反面、求められるアウトプット・アウトカムは増えていく、ということです。
だとしたら、その間にあるところ、つまり行政運営も変わっていかないといけないということになります。
「財政」は突き詰めるとインプットをどこにどれだけするかという話になりますが、そのインプットをどうアウトプットに変換し、かつアウトカムに結びつけていくかというのは、変換機構としての行政の在り方がとても重要になります。
では、どういう方向で変わっていくのかということを考えた時に、デジタル活用や行政サービスデザイン、そこから副次的に出てくるデータの活用などが避けて通れません。
行政の中で創り出されるデータもオープンデータにしていくことで、それらを活用した広い意味での公共的サービスが増えてくれば、行政コストをさらに減らすことができるかもしれないという期待があります。
今は「VUCAの時代」と言われるように不確実性が高い時代であり、なかなか将来を見通すのが難しい中で財政ビジョンが果たす役割はどのようなものですか。
近藤)よく言っているのは「ビジョン」であって「計画」ではないということです。10年、20年のスパンで「計画」を作ると硬直的になってしまうので、目指すべき「持続的な財政」をしっかりと定義した上で、目指す方向をビジョンとして示しています。
一方で、短期的なアクションも必要ですので、データ編ではアクションも提示しています。大量のデータとともに掲載したので全体として分量が多くなってしまいました。(笑)
税データのオープンデータ化推進など思い切った取組みも記載されていますね。
近藤)現在税務システムの再構築が主税部で進行中ですが、ビジョンの議論をする中で主税部の若手を中心に「やろう」と声が上がり、それをマネジメント層がしっかり受け止めてくれた結果です。
データも大事ですが、税務行政自体もデジタル技術を活用しながら効率化を進めていくことが、納税者の皆様の利便性を高めつつ、安定・充実した税収確保のために必要だと考えています。
-後編に続きます。