常に仰ぎ見るべき「北極星」としての財政ビジョンと、それを支える「見える化」(後編)
前編から続く
皆様こんにちは。
横浜市デジタル統括本部です。
前編に引き続き、「財政×デジタル活用」をテーマに、「横浜市の持続的な発展に向けた財政ビジョン」と、市の財政をわかりやすく可視化しただけではなく、それぞれの事業予算ごとに民間からの提案を受け付けるための入口を作るという「財政見える化ダッシュボード」の取組みを中心に、横浜市財政局財政課のお話をお届けします。
お話を伺った方
財政見える化ダッシュボードの取組み
財政ビジョンをもとに行われる様々な取組みの中で生まれるデータの見せ方として「財政見える化ダッシュボード」のような取り組みがとても重要になると思います。「財政見える化ダッシュボード」の概要とどのような機能があるのか教えてください。
小田)「財政見える化ダッシュボード」は、横浜市における予算の使われ方や予算事業の内容を分野別にわかりやすく可視化したサイトです。
これまでも様々な方法で市民の皆様に予算・財政についてお伝えしてきましたが、子育てや教育、防災、感染症対策などの行政分野ごとに、どんな事業がどのくらいの予算を使って行われているかという情報にたどり着けないというお声もいただいていましたので、それにお応えする形で株式会社WiseVineと連携して構築しました。
予算を円グラフやツリーマップなどでパッと見でわかるよう表示しています。予算総額のほか、行政分野ごとに絞り込んだり、気になるキーワードで検索してみたりなど、見る方の興味関心に合わせてご覧いただけます。
直観的に動かすことができる操作性や、パソコンだけでなくスマホやタブレットにも対応した表示など、簡単にご覧いただけるよう細かな点も工夫をこらしています。
さらに個別事業の画面では、予算額の推移や財源の内訳、事業の目的や必要性などの概要をご覧いただけます。また、より詳しく知りたい方には、事業計画書等をダウンロードすることも可能です。
公民連携提案ボタン
特筆すべきは、この個別事業ページにある「この事業への提案窓口はこちら」というボタンだと思います。公民連携のための仕組みと聞きましたが、これは政策局共創推進課と連携した取組みになるのですよね。
小田)そうです。こちらからいただいた提案については、本市政策局共創推進課が行っている公民連携の取組みである「共創フロント」におけるフリー型、テーマ型の提案と同じスキームで受付をしています
公民連携においては、その提案自体をどう政策に繋げるかというところが難しいところですが、共創推進課がこれまでの経験を基に提案の中身まで入り込んで、提案してくださった事業者さんと詰めた上で、所管課への橋渡しをするという流れで動いています。事業者の皆様には、ぜひ、提案をご検討いただきたいですね。
見える化ダッシュボードにおける事業情報をベースとした提案となると、テーマ型・フリー型とも違う中間的な位置づけの提案に思えます。
小田)そういう面もありますね。実際のところいただいた提案が馴染まないということもあると思いますが、正直、もっと市がどんな事業を行っているかという詳細な情報がご提示できていれば、民間企業の方などからもプラスアルファでこんなことができるというような提案をしていただけるのではないかと感じています。そういう意味で、これからデータの見せ方をどのようにしていくかが課題になると思っています。
行政経営プラットフォーム(仮称)
そういえば財政ビジョンの中には「行政経営プラットフォーム(仮称)」の整備を行うということも記載されていました。それはより高度なデータの見せ方が可能になる仕組みですか?
近藤)「行政経営プラットフォーム(仮称)」は、令和6年度から稼働予定の新たな財務会計システムをベースとして、データの集積・活用により行政経営を支えるためのプラットフォームです。
横浜市役所内には予算の編成だけではなく、日々の執行の中で生まれてくる膨大なデータがありますので、個々の事業を一番下の土台にして、そこに経営に資するアウトカム指標やデータを結び付けていき、そうしたデータの集積をダッシュボードのように見ながら、執行や予算編成などに活かしていく、まさに「行政の経営をするためのプラットフォーム」にしていこうという構想です。
今は執行状況も各所管に依頼をして、膨大な手間をかけて人力で集約する必要がありますが、横浜市のように大きな予算を持つ自治体で、特にコロナ禍のように1年に何回も補正予算を組むような状況で、そのようなやり方では機動的な対応は厳しいと言わざるを得ません。
行政経営プラットフォームによって、例えば、執行状況が随時で把握できれば、すぐに補正予算対応などに反映できますし、インプットだけではなくアウトプット・アウトカムまで見られれば、さらに精度の高い対応が可能になると考えています。
そうして見える化のスピードを上げていくことで、さらにそこに新しい提案やパワーを入れていくことができるはずだと考えています。
デジタルの世界で言うところの「アジャイル」な考え方ですね。
補正を考慮しない場合、現状の予算編成は前年度に計画したものを翌年度に執行していくということで、方向性の変更が必要でもそのために2年近い時間が費やされてしまいますが、行政経営プラットフォームのようなものがあれば、その改善サイクルを早くできる可能性がありますね。
考えるほど面白い取り組みで、デジタル的にもできることが多く、ビジョンが示している長期的なスパンで考えればさらに技術革新も進んでいるはずなので、未来がとても楽しみな取組みです。
近藤)データをオープンにするかどうかの議論はありますが、少なくとも庁内においては、様々なデータをやり取りしながら、個々の事業をデザインしていくために各局区がコミュニケーションすることが今後はより重要になっていくと思います。そのためのタッチポイントとして「デジタル」は欠かせないものになっていくので、デジタル統括本部の「デジタル×デザイン」に期待したいところです。
一方で、財政課の職員は庁内に対して政策のオルタナティブを示していく立場もあると思っています。
お金の効率的な使い方や効果の出し方などについて、これまでとは違ったやり方を示していくために、デジタル統括本部の職員のように最新鋭の知識はなくても、自分たちのキャパシティの中でデジタル活用についても例示していけるくらいのリテラシーは必要なのかと思っています。
そうですね。昔は本当にごくわずかな事業のみデジタルの要素があるという感じでしたが、技術革新によってデジタルがカバーできる範囲がどんどん広がっていて、今はどんな事業でもまずデジタル活用という要素が入り込むことができるという時代です。
全ての職員が最新のデジタル技術にキャッチアップし続けることは難しいですし、その必要もないと思いますが、ある意味「ヒント」と言いますか、「もしかしたらこういう技術で効率化やサービス向上ができるかもしれないから、デジタル統括本部に相談してみよう」ということはあるべき流れだと思います。
ぜひ今後もよろしくお願いします。