アートイベントを支えるテクノロジー ―ヨルノヨ
皆様こんにちは。
横浜市デジタル統括本部です。
「YOKOHAMA」と聞いて皆様が頭に思い浮かべる光景はどのようなものですか?
横浜に住んでいてもいなくても多くの人が思い浮かべるのはやはりミナトの光景や夜景ではないでしょうか。
皆様がよく頭に思い浮かべるミナト・横浜の光景は、マリンタワーの前にある山下公園あたりから船の帆をイメージした建物が印象的なヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルがある臨港パークまでの水際線にあり、都市デザイン的にはこのラインを「ウォーターフロントの軸線」と呼んでいます。
このエリアは多くのドラマや映画などに登場するほか、様々なアートイベントが開催されています。
通常「アートイベント」といえば、何らかの展示物が固定されていてそれを鑑賞して回るというスタイルが一般的かと思いますが、横浜ではウォーターフロントの軸線に広がる港の夜景を目いっぱい皆様に楽しんでいただきたい!という思いから、街ぐるみで光のアートイルミネーションを展開する「創造的イルミネーション事業」を行っています。
2022年も開催中のイベントの名前は「ヨルノヨ」
まずはこちらをご覧ください。
「ヨルノヨは、先端技術を活用して他では体験できない横浜ならではの創造的な演出を行うイベントである」という噂を聞いて、デジタルを司る部署としてはぜひともお話を聞かなくては…!ということで、文化観光局創造都市推進課の担当者の皆様と照明の技術的な部分を担うカラーキネティクス・ジャパン株式会社の方にお話を伺ってまいりました。
ヨルノヨが始まったきっかけ
デジタル統括本部(以下「デジ」):まず最初に「ヨルノヨ」がどのように始まったのか教えてください。
文化観光局(以下「文化」):ヨルノヨは、ラグビーワールドカップ2019及び東京2020オリンピック・パラリンピックを契機に、世界から選ばれる夜間の観光コンテンツづくりを目指した横浜ならではの取り組みとして始まりました。
横浜市は首都圏の中にあるため来街者の多くが日帰りであり、夜の消費活動に繋がらないという課題があります。
そのため、夜間に楽しんでいただけるコンテンツを生み出すことで経済効果を高める「ナイトタイムエコノミー活性化」の一環として「創造的イルミネーション事業」を開催することになりました。
ヨルノヨの楽しみ方
デジ:オススメの楽しみ方はありますか。
文化:34施設の照明の光と音楽を連動させた演出「NIGHT VIEWING」の、メインビューポイントである大さん橋国際客船ターミナルからの景観や、大さん橋ふ頭ビル外壁や山下公園でのプロジェクション、そしてメイン会場の新港中央広場も楽しんでいただきたいです。また、横浜の街を巡って楽しむキャンペーン「ハマぶらりー」を実施しています。ヨルノヨとあわせて、新たな横浜の夜の魅力を発見できるデジタルスタンプラリーやデジタルクーポンの発行などを行っていますので、街の様々な場所でヨルノヨとあわせてお買い物やお食事などを楽しんでいただければと思います。
イルミネーションを支えるデジタル技術
デジ:これだけ広い範囲で光の演出を連動させるにはデジタルの力なしでは行えないと思いますが、どのようなテクノロジーが使われているのでしょうか。
カラーキネティクス・ジャパン株式会社:今回の光の制御には「DMX(Digital Multiplex with 512 pieces of Information)」という通信プロトコルが主に使われています。舞台やイベントなどでデジタル信号との親和性が高いLED照明の採用が主流となったことから使われている制御技術ですが、ヨルノヨではこれにカラーキネティクス・ジャパン株式会社独自の照明制御技術を組み合わせて演出を行っています。
カラーキネティクス・ジャパン株式会社の「デジタルカラーライティング」は、「光の三原色」(赤・緑・青)のLEDとマイクロプロセッサーを組み合わせることで、光の色を自由に表現することを可能にしたテクノロジーです。元々、舞台演出などでプロが使う照明システムはありましたが、専門家がいなくても、簡単に操作できるコントロ-ラーや専用ソフトウェアを仕込んだノートパソコン1台で気軽に光の色を扱えるようにしたことで、建築を含めた様々な場所で照明演出が使えるようになりました。
2015年には「全ての照明器具をIoT(※)化する」というコンセプトを掲げ、LED+コントローラー+インターネットの組み合せによる演出を開始し、それを活用した景観照明演出として横浜市へ提案を行ったことから「ヨルノヨ」が始まったのです。
デジ:演出を行う建物側にはどんな条件がありますか?
カラキネ:基本的には弊社のLED照明と専用のコントローラー、インターネット回線が必要となります。弊社の照明機材ではない場合も、制御可能な規格の照明器具が入っている場合は、動作テストなどを経て、変換器や中継器を入れることで、一括制御やクラウド管理が可能になります。
デジ:実際の演出調整はどのように行っていますか。
カラキネ:今回は全34施設の中で、25施設の照明をクラウド制御しています。各施設の調光・調色制御はノートパソコンから遠隔で行えるようになっています。
演出に関しては、クリエイティブチームの演出プランと合わせてシミュレーションを繰り返しながらパソコン画面でベースプランを作り、その後は現地で実際に光を見ながら微調整をして仕上げました。
大さん橋にノートパソコンを持ち込んで実際の光を見てみると、光の変化のスピードが体感として早かったり遅かったり、ビルの外壁の素材によっては照らしたときの色が想定と違ったりするので、各施設ごとに光の色や強さを微調整することで全体を一枚絵として見せるように調整していきます。
デジ:なにも考えずに「キレイだねー」と見ていましたが、皆様のご苦労があっての美しさなのですね…。もうひとつ教えていただきたいのですが、デジタルカラーライティングの技術を社会的課題解決に活用することは可能でしょうか。
カラキネ:色々考えられると思います。例えば防災を目的に、横浜市役所などに既に設置されている照明にクラウド制御を組み合わせることで、緊急時に光の色を変えて近隣の人にいち早く伝える、といったことは容易に実現可能かと思います。外国人や小さなお子さんなど、言葉でニュースが伝わりにくい方々の助けになるかもしれません。
デジ:確かにそうですね!アイデアとしてメモさせていただきます!
今後に向けて
デジ:最後に今後のヨルノヨの展望などがあれば教えてください。
文化:ヨルノヨは街ぐるみで行っていますので、今後も協力してくださる企業や地域の方を増やしていきたいと思っています。照明のコントロールについてもカラーキネティクス・ジャパン株式会社のお話のとおり、フルカラーLED照明を利用されている建物についてはデジタル制御を行うだけでヨルノヨにご参加いただけるので、照明設備改修などの際はぜひフルカラー化や参加をご検討いただけると嬉しいです。
デジ:これからのヨルノヨが楽しみです。本日はありがとうございました!